東日本大震災からの復興支援を目的として2013年に始まった、自転車のロングライドイベント「ツール・ド・東北」。
2019年開催の第7回大会に参加したレポート記事にて、エイドや走行コースを中心に紹介しました。
ただ、ツール・ド・東北の意義は、「順位を競うレースではなく、津波の被害を受けた宮城県北部の海岸を走りながら、現地の現状を見てもらうファンライド」です。
僕が参加したコースは気仙沼から石巻までの100kmを走る「気仙沼ワンウェイフォンド」。
気仙沼から石巻まで、震災から8年6か月経った2019年9月の、コース沿いの風景を残します。
ツール・ド・東北イベント前日 気仙沼市街
かつての線路とBRT
スタート地点の気仙沼には、スタートの前日に到着。
受付場所の下見をし、市街を回りました。
気仙沼駅。
JR大船渡線は、次の駅が消されてしまっています。

今は気仙沼から先、大船渡線と気仙沼線の海岸線は、BRTという代替バスが走っています。
JR東日本|気仙沼線・大船渡線BRT(バス高速輸送システム)
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全域は、Yahoo!地図において赤線で示されている区間。
かなりの長距離です。

気仙沼駅においても、駅のホーム上にバス停がありました。並んでいる人が多かったので、写真は遠慮しました

気仙沼駅近く、JR気仙沼線の線路があった場所が、BRT専用道路になっていました。
向こうがJR大船渡線、手前がBRT気仙沼線です。

別の地点では、かつては線路があったのでしょうか。
整備工事がされています。

市内のあちこちで見る浸水深標識
街のあちこちに、津波の浸水深を示すプレートがあります。
港から離れた、少し街中の気仙沼市役所でも浸水深は150cmくらい。


気仙沼の海岸線にある店舗では、浸水深は3mを超えているのではないでしょうか。

ツール・ド・東北イベント当日 コース沿いの風景から
気仙沼から石巻へ進む道路にも、特に坂道の途中に、過去の津波浸水区間を示す標識がありました。

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(気仙沼向洋高旧校舎)
第一エイドであった波路上・伝承館(はじかみ・でんしょうかん)は、もとは気仙沼向洋高校の旧校舎。
海に近い立地で、4階の壁が削られていました。

平屋建ての校舎は、全体が沈んでしまったと思われます。

震災伝承施設 総合結婚式場「高野会館」
途中の南三陸町で通り過ぎた建物も、屋上を残して沈んでしまったようです。

沿岸では、津波はかなりの高さであったことがわかります。

ホテルかな?と思って調べてみると、建物の名前は「高野会館」。
なんと第3エイドの「南三陸ホテル観洋」所有の総合結婚式場でした。
民間業者(ホテル観洋)が、震災遺構として残す決定をしたという稀有な施設です。
ホテル観洋スタッフブログ|震災伝承施設に…「高野会館」と「命のらせん階段」が登録されました
高野会館は志津川湾から約300メートルの平地に立ち、宮城県南三陸町の数少ない総合結婚式場でした。
震災当日は、町の高齢者の方々の芸能発表大会が行われてた中で地震が発生。
「帰したら、津波で危険だ」と避難誘導に当たった従業員らの判断により、327名と犬2匹、全員の命が助かっています。
四方を水で囲まれた会館はまるで孤島のようだった。佐藤さんの手帳には津波の記録が残る。
<午後3時26分、第1波。40分、引き始め>
<4時13分、第2波。28分、引き方開始>
<5時、第3波。10分、引き波開始>
そう書いたところで手が止まった。2キロ弱先の荒島までの海底が姿を現している。
河北新報ONLINE|<アーカイブ大震災>生きたかったら残れ-高野会館
産経フォト|330人を救った高野会館 南三陸町・佐々木真さんが見た「あの日」
参照した記事を見ると、この高野会館の周辺には、かつては大型店舗や病院があったことが分かります。
写真のとおり、今はかさ上げされた山のみです。
かさ上げ工事・防潮堤
気仙沼から石巻にかけて、長い区間に渡って、ずっと工事をしていました。


かさ上げ、防潮堤、道路、橋の工事が続いています。

旧石巻市立大川小学校
コース沿いにあったものの、あえて案内はされませんでした。
橋を渡って、進行方向とは逆。
振り向いて気づいた人だけが立ち寄り、黙祷を捧げました。
言葉がありません。


東北のご飯は美味しいぞ
答えは出ないけど、見た。考えた。
確かに、沿岸は津波の被害から復旧しつつあります。
でも、まだまだ工事は続いており、線路や家屋や奪われた生活は戻ってきません。
申し訳なくも、2019年の今しか知らない、外部の人間である僕には、100%を理解することはできません。
ただ、何が起こったかをこの目で見ることができました。
ツール・ド・東北に参加した4,000人それぞれのエネルギーが、継続した応援につながりますように。
東北のご飯は美味しいぞ
「気仙沼お魚いちば」の海鮮も塩ラーメンも気仙沼ホルモンも美味しかったし、石巻の寿司も美味しかった!
まだ食べたりない!また行こう!
